朝エンジンがかからない!そんな状況に陥った時、まずバッテリー上がりを連想すると思います。
しかしバッテリーを交換しても何故かバッテリーが上がってしまう。
私が整備士としてまだまだ未熟だった頃、色々な整備工場で見て貰ってバッテリーが悪かったから交換したけど何度もバッテリーが上がってしまうL375Sタントのお客様が来店された時の話をします。
結論から言うと暗電流が過大になっていて犯人はCVTコントローラーだったのですがそこに至るまでの過程で私は故障診断に対して自信を持てるようになりました。
お客様来店理由
バッテリーが上がるから色々な所で診て貰った
けど全然直らないんです
それはご不安ですね。
恐らくお時間を頂くようになりますが必ず修理いたします
とのことです。
当時の私にはこのタントの修理をプレッシャーに感じました。
車両情報
故障診断
当時の私は未熟で、最初に思ったことは「どなんすればええんじゃこれ…。他の工場で直ってないのに私に直せるのか」でした💦
うろたえても仕方ないので症状を発生させるために走行、駐車、ドアロックをかけて放置など色々試し何をしてもバッテリーが上がることなく三日が経過しました…。
その間オルタネーターの点検、バッテリーの点検などできることをし途方に暮れその日の帰りにアナログサーキットテスターをマイナス端子にセットし暗電流を測定することにしました。
暗電流測定
暗電流とは、イグニッションスイッチがOFFの状態でも、時計やカーナビ、ECUの学習メモリーの保持のために常時流れている待機電流のことです。
暗電流を計測するためにはクランプメーターを使うかサーキットテスターをマイナス端子とアース線の間に直列に接続します。
その日のタントの暗電流は30㎃ととても一晩でバッテリーが上がる値ではありませんでした。
オルタネーター 異常なし
バッテリー 二回交換してるし正常
暗電流 異常なし
もうこれどないしたらええんや!
そんな感じでもう無理やこれって思いかけた次の日の朝です。
暗電流過大発生
暗電流の測定を実施すると30㎃~250㎃までサーキットテスターの針が脈を打つように振れています。
「待ってたぜェ!!この瞬間をよォ!!」
もう武丸みたいになってたかもしれません。
暗電流が過大になってくれたらやりようがあります。
大元のヒューズを抜いていけばどこかで暗電流は低下するはず!
ヒューズからたどってみる
ヒューズを1つずつ抜き差ししていくとECU-IGのヒューズで暗電流は脈を打つのは変わらず100㎃まで低下しました。
それでもまだ漏電しているだと!
これはどこかの回路とつながっているのでは?
ECU-BのヒューズはCVTとエンジンコントロールシステムにつながっています。
これだけではつながっているカプラーが多すぎ特定まで時間がかかりすぎてしまう!
そこでECU-IGのヒューズを戻しCVTと繋がっているECU-IGのヒューズも抜いてみます。
すると暗電流は下がらない物の脈打つことはなく180㎃で停止しました。
このことから2つのヒューズと関係しているCVT本体もしくはCVTコントローラーの回路内で何かが起こっているはず!
ここまで来てようやく答えが出ました。
つまりはCVTコントローラーの内部でショートしている!
と言うことでやっと修理内容が決定したのでした…。
修理内容
CVTコントローラー交換!以上
当時このタントはまだ保証修理が適用されたのでCVTコントローラーを分解したかったのですが、
メーカーに回収され内部の様子をみることはできませんでした。
まとめ
このタントの修理は非常に珍しい故障で実力不足の当時の私にはとてもいい経験になりました。
暗電流過大と言えば後付けの社外部品と言うのがセオリーだと先入観を持って故障診断をしがちです。
当てずっぽうカーオーディオを交換した整備士の気持ちも分からないことはないです。
しかし、お客様にとっては修理に出したら直って当然です。
信頼を失わない為にこれからも精進しなければと思わせてくれる事例でした。
暗電流を測定する為に必要な工具
暗電流を測定するには㎃単位で表示されるテスターが必要です。
テスターにはアナログテスターとデジタルテスターの二種類があります。
どちらも安いものなら3000円程度から販売されています。
高級なデジタルテスターのほうが正確な数値が測定できますが、アナログテスターなら安価なものでも正確な数値が測定できます。
私は状況に応じてテスターを使い分けています。
- 狭いところの電流を測定するクランプメーター付きテスター
- 大電流が流れる場所に使用するクランプメーター
- 今回のような細かい脈打つような漏電に対処するためのアナログテスター
の三つを所有しています。
個人で持っていた方が仕事が捗りますよ。
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