HE22Sは、スズキ・ラパンの2代目モデル。
その可愛らしいデザインから今でも根強い人気があり、街中でもよく見かけます。
そんなHE22Sも、年数が経過するとどうしても避けられないのがエアコンの効きが悪くなる症状です。
特に夏場は「風は出るけど冷えない」「アイドリング中に効かない」といった不具合でご来店されるケースが増えています。
実際、うどん整備士が勤める工場にも、スズキの軽自動車全般、今年だけで同様のエアコン修理依頼が15件以上入庫しています。
特にコンプレッサー・エバポレーター・コンデンサーのトラブルが多く、ダッシュボード脱着が必要なケースも。
今回はそんなラパンHE22Sのエアコン不具合に対して、実際の分解・修理・交換の様子を「写真付き」で詳しく記録しました。
整備士としての経験を元に、
「どんな不具合が起きるのか?」「修理にはどんな手順が必要か?」「DIYはできるのか?」
といった実情も踏まえながら紹介していきます。
お客様来店理由
今回ご来店されたのは、HE22S型のスズキ・ラパンにお乗りのお客様。
「5月頃からエアコンの効きが弱くなってきた気がする」と感じていたそうですが、7月に入ってからはほとんど冷えなくなったとのことで、当工場へご相談いただきました。
走行中も冷風が出ず、特にアイドリング時はぬるい風しか出てこない状態。
ガソリンスタンドでガスチャージを試してみたものの、一時的に冷えるだけですぐ元通りになってしまったとのことです。
このままでは夏を乗り切れないということで、今回はしっかりと点検と修理をご希望され、入庫されました。
車両情報
診断方法
まずマニホールドゲージを接続して確認したところ、低圧・高圧ともに大きく下がっており、冷媒ガスの漏れが疑われる状態でした。
エバポレーターは車内奥に設置されており、外部からの目視点検が困難です。
そこで、大幅なガス漏れがある場合に見られる兆候――結露水の排出ドレインにエアコンオイルが混ざっていないかを確認。
さらに、車内にガス特有のにおいがあるかも判断材料のひとつとなります。
また、車外では配管・コンプレッサー・コンデンサーの各接続部にオイルの滲みがないかを、紫外線ライトを使用して点検。
今回はこれらの外部点検ではガス漏れやオイルの痕跡が一切確認できなかったため、最終的にエバポレーター本体からの漏れと判断しました。
さらに、走行距離が10万キロを超えており、車齢も相応に経過していることから、
ガス漏れによってオイルが不足した状態での使用により、コンプレッサーやコンデンサーの内部にダメージが及んでいる可能性も高いと判断。
そのため、エバポレーター単体の修理にとどめず、コンプレッサー・コンデンサーも含めた複数部品の同時交換をご提案し、ご了承をいただきました。
修理内容(交換部品)
- エバポレーター
- エキスパンションバルブ
- コンプレッサー(リビルト)
- コンデンサー
- Oリング類一式
- インシュレーター(断熱材)
- クーラーガス(R134a)×2本
交換手順|HE22Sラパンのエアコンユニット分解と主要部品の交換作業
Step1:エンジンルーム側の準備作業
まずは真空引きを済ませて置きます。

ステアリングロックを解除した状態でバッテリーとエアクリーナーボックスを取り外して、作業スペースを確保します。
続いて、ヒーターホースを外し、エキスパンションバルブの冷媒配管を取り外します。
ヒーターホースとエキスパンションバルブの間にヒーターユニット固定なっとがあるので忘れずに取り外し。

この車両ではネジ山に損傷があったため、TONEのダイスアンドタップを使用してネジ山を修正しました。

また、コンプレッサーとコンデンサーの交換作業に備え、フロントバンパーを脱着しています。

Step2:ダッシュボード脱着に向けた室内分解
次に室内作業です。まずAピラーの内張を取り外し、
ナビユニットは配線の取り回しがきつかったため、一時的に取り外しました。


続いてダッシュボード裏の配線類をすべて分離し、シフトケーブルも外します。




ステアリングコラムは半脱で行きます。
傷つけないよう梱包材等で保護しておきましょう。

固定ボルトをすべて外してダッシュボードを脱着します。


Step3:エアコンユニットの分解とエバポレーター交換
ヒーター&エアコンユニットを車内から取り外し、ケースを分解。


内部のインシュレーター(断熱材)を新品に交換し、さらにエバポレーターも新品へ交換します。

インシュレーターにコンプレッサーオイルが付着し、溶解してます。
エバポレーターからのガス漏れで正解でしたね。
作業中にユニット内部を丁寧に清掃し、ゴミやオイルの残留がないように処理しました。
Step4:コンプレッサー・コンデンサーの交換
エンジンルーム側に戻り、新品のコンプレッサーとコンデンサーを取り付けます。


高圧・低圧の冷媒配管をそれぞれ確実に接続し、Oリングもすべて新品へ交換しました。
Step5:真空引きとクーラーガス充填
配管の接続が完了したら、マニホールドゲージを使用して真空引きを実施。
漏れチェックを行い、問題がなければR134aクーラーガスを2規定量充填し、適正圧力まで調整します。

Step6:復元・作動確認
ダッシュボード・シフトケーブル・配線類を復元。
バンパーを取り付け、
エンジンを始動し、エアコン作動圧力確認・吹き出し温度チェック・異音や漏れの有無を確認。
全項目に異常がなければ、作業完了です。
注意点
- エバポレーターからのガス漏れは外部から確認できない場合が多いため、診断には慎重な判断が必要です。
- ガス漏れ状態での長期使用は、コンプレッサー内部にダメージを与えるリスクが高くなります。
- 分解にはダッシュボードの脱着が必要となるため、DIYではなく整備工場での作業が推奨されます。
- 配線やシフトケーブルなど、誤って損傷させないように細かい配慮が必要です。
✅ まとめ
HE22S型ラパンのエアコン不良は、年数や走行距離が進んだ個体では複数箇所の劣化が同時に起きることがあります。
今回はガス漏れの診断から、ユニット内部のエバポレーター、コンプレッサー、コンデンサーまでを一括で交換。
「冷えない原因がどこかわからない」「一時的に冷えるけどすぐダメになる」という場合には、
今回のように一度しっかり分解して根本から修理することが重要です。
整備士の立場から見ても、HE22Sのエアコン修理はDIYには向かない作業であり、
安全かつ確実に修理したい場合は、整備工場への相談をおすすめします。
使用工具紹介|TONE(トネ) ダイス&タップセット TDS400
今回の作業では、錆びた鉄製ボルトのネジ山修正に
TONE(トネ)のダイス&タップセット TDS400を使用しました。

まず使用感については、さすがTONE製といったスムーズな切削感と高い精度で、非常に使いやすい印象です。
手に取ったときの重量感やホルダーの作りも、安物とは一線を画しています。
ただし正直なところ、ラインナップされているサイズ構成はやや癖があり、”かゆいところに手が届かない”感もあるのが本音です。
「M10が細目だったら完璧なんだけど…」なんて思う場面もありました。
とはいえ、日常整備で使う頻度の高いサイズはおおむねカバーされており、ネジ山修正用途としての完成度は高いと感じました。
「ちゃんとした1セットを持っておきたい」という方にはおすすめできるモデルです。



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