こんにちは。うどん整備士です。
いすゞ自動車にはマニュアルトランスミッション(MT)の長所と、オートマチックトランスミッション(AT)の長所を両立させたクラッチレスMT、スムーサー(Smoother)と言うトランスミッションを採用した車両があります。
運転してみると操作しやすくとても良いミッションです。
しかし故障してしまうと情報も少なく苦労することもあります。
今回はスムーサー(Smoother)を搭載したNKR81エルフのトランスミッション載せ替えについて解説します。
なかなか発進できないエルフ
中古車として入荷したNKR81エルフダンプ。
もう買手も決まっており、納車整備する為に移動して見ると…。
2速に入れてもなかなか発進できない💦
クラッチが繋がるまで5秒ほどの時間がかかるようです。
これでは乗ってられませんね。
どんなことになっているか点検してみます。
車両情報
平成18年とそんなに前からスムーサーが採用されていることに驚きました。
点検内容
まずスムーサーとはどんな物や?と思い調べてみます。
なるほどトルクコンバーターと湿式多板クラッチがついたマニュアルトランスミッションですな。
と言ううことでまずATFが入っているか点検!
ATFが入っていない!
どこから漏れ出しているか確認します。
トルクコンバーター下にATFが滴り落ちています。
この漏れの量はオイルシールの劣化と言う次元ではなさそう💦
ATFを足してみても発進時の時間差は解消されなません。
AT部分の内部で何か起きているのでしょうか?
私の予想では図の4番オイルポンプ付近にスラッジが詰まり油圧不足になりポンプ付近の内圧が上がり赤丸部分のオイルシールが押し出されたと言ったところでしょうか。
ここまで異常が起きているならばミッションを載せ替えた方が良いでしょう。
比較的走行距離の少ない中古ミッションが見つかったので載せ替えることになりました。
修理内容
交換手順
ミッションオイルとATFを抜き、
早速ミッションを降ろす作業に取り掛かります。
このエルフはダンプなので荷台を上げて作業できるので助かります。
シフトリンクを取り外します。
セルモーターは付いててもいいのですが視界を確保する為に外します。
ミッション上側のハーネスはこの二つのカプラーを分離すれば、ミッションに着いた状態でミッションを降ろせます
プロペラシャフトは結構重いので気を付けて外します。
DPDユニットはミッションを下げる際に邪魔そうなので取り外します。
差圧センサーを外し…。
ボルトが折れそう💦なのでもう一つ後ろ側でマフラーを分離します。
フロント側も分離。
DPDユニットは、そこそこ重量があるのでミッションジャッキで支えておきます。
気付いた方もいるかもしれませんが、実は取り付ける時の写真です。(笑)
エキゾーストパイプも邪魔なので取り外します。
ついでにDPDを洗浄したのでボルトを新品に変えました。
DPD(DPF)洗浄についてはまた別の記事で紹介します。
PTOワイヤーを分離。
14のボルト6本外せばPTOユニットが分離できるのですが、PTOを手で支えて外すことはしてはなりません。
PTOユニットが洒落にならないくらい重たいので必ずロープで縛る、ミッションジャッキで支える等してボルトを外さないと落下します。
外したPTOユニットはフレームにロープで縛って邪魔にならない位置に吊るしておきます。
ATFクーラーのパイプを分離します。
曲がりやすいので慎重に緩めます💦
トルクコンバーターとフライホイールの締結ボルトを6本取り外します。
クランクプーリーを回転させるのは面倒なのでリングギアをマイナスドライバーでこじって
回して固定して緩めていきました。
ミッションジャッキ締結ボルトを外しミッションジャッキで支えます。
ミッションマウントも外しミッションが降ろせる状態になりました。
トルクコンバーターが落下しないようタイラップ等で縛りミッションを慎重に降ろします。
トルクコンバーターを外すとやはりオイルシールがトルクコンバーター側に飛び出てます💦
しかも傷だらけ!
オイルポンプケースも削れてしまっています。
赤丸の所に本来は油路の穴が空いてあるはずなのに削れ飛んでますね…。
中古ミッションの為インプット側とアウトプット側のオイルシールを打ち換えておきます。
後は元通り組付けていきます。
ミッション載せ替え後に初期学習をして完了です。
試運転してみるとスムーズに発進でき、変速ショックもなくなり快適になりました。
Smoother-e初期学習手順
Smoother (スムーサー)のトランスミッションを載せ替えした場合、
以下の初期学習をしなくてはいけません。
コメント