商用小型トラックとして長年販売されているエルフ。
NKR81はマツダ・タイタン、日産・アトラス、UD・コンドルと3社にOEM供給されとんでもない販売台数だったりします。
もうかなりの年数が経ちましたが、まだまだ現役です。
ダンプなどの架装車は車両価格が高いので修理して使いますよね。
今回はそんなNKR81のインジェクター、DPD修理についてご紹介します。
お客様来店理由
ある日、オイル交換に来店されたお客様より
「しばらく前からアイドリングが安定せず、ハンチングするんだ。
DPDランプが頻繁に点灯し手動再生にも時間がかかって仕事に支障がでる」
とのことで相談されました。
たしかに、非常に不安定なアイドリングですでにDPDランプも点灯しています。
車両情報
診断方法
まずは、DPDランプが点灯しているのでDTCの確認します。ちなみに使用している機器はG-scan2。
やはり記録されているコードはP1454DPD過捕集ですね。
このコードは簡単に言うと『PM堆積量がDPD再生不可レベルと判断された時』にセットされます。
そしてその判断は、
このDPD差圧の数値で判断されます。
基準値は無負荷最高回転数時、18.8K㎩以上ならばDPD交換とのことです。
そこまでの差圧にはなりませんでしたので、分解洗浄を実施します。
忘れてはならないのが、DPD・DPFの再生が頻繁に行われる場合
シリンダー内の燃焼が上手くいかず煤の発生量が多い場合がある
ということです。
ここを失念しているとすぐに再入庫することになります。
ですので、データモニターの数値はよく観察する必要があります。
インジェクター噴射補正量の数値が異常ですね。
第1、第2気筒がプラスに最大値、弟3、第4気筒がマイナスに最大値とは…。
∓5.0以内に収まるのが正常な範囲です。
そして圧縮測定するも正常。
インジェクターに繋がるコネクターにオイルの浸入があるものの、短絡はなし。
なのでインジェクターノズルの詰まりと判断します。
そしてここまで不完全な燃焼状態であるならば
EGRより吸気側へ煤が回っているはず…。
インテークも見てみます。
EGRバルブを取り外してみます。
ドえらいことになっていますね。
さあ、ここまで点検して修理方法が決まりました。
修理内容
作業手順
まずは、洗浄剤に着けておく時間が必要なのでDPFを取り外していきます。
温度センサーを取り外し
差圧センサーのホースも分離
エキゾーストパイプも分離
リアも分離
ここから分解するわけですが
DPF洗浄についての解説は別記事で上げますのでそちらをご覧ください。
インテークマニホールド洗浄
DPFを洗浄剤に着け置きしている間に、インテークマニホールドを取り外していきましょう。
EGRを取り外し
コモンレールまで取り外さなくてはインテークマニホールドは外れないので
取り外します。
スパナではナメる恐れがあるのでクローレンチを使います。
インジェクターパイプに異物が入らないようマスキングしておきます。
スロットルバルブ(吸気シャッターバルブ)配線やパイプも取り外しコモンレールを外します。
ここまで外してやっとインテークマニホールド(チャンバー?)にアクセスすることが出来ます。
四角で囲った部分、吸気シャッターバルブの裏側にもボルトがありますが、煤に埋まって見えません💦
煤を掘るにはセリアのパフェスプーン!
煤を砕くとボルトが現れました。
インテークマニホールドを取り外すとインテークバルブ周辺はベチャベチャの煤でいっぱいです。
煤をシリンダー内に落とさないよう各気筒を圧縮上死点に合わせた状態で
掃除機を当てながら百均のパフェスプーンで取り除いていきます。
インテークに吸わせる系の洗浄剤などクリーンディーゼルには無意味なことがよくわかります。
ウォールナットブラスターやドライアイスショットがあればもっと奥まで綺麗にできるのですが…
ウォールナットブラスターが欲しすぎる!
インテークマニホールド(チャンバー)も煤を砕いて洗浄します。
インジェクター交換
インテークの清掃も終わったのでインジェクターを取り外していきます。
タペットカバーを二段とも取り外します。
配線を取り外した後、インジェクターを取り外すにはスライドハンマーとアタッチメントが必要です。
私はエンジンを釣るフックを加工していますが、写真を撮り忘れました💦
SSTの方が安全ですが、正直種類が多過ぎて揃えるのきついですね。
インジェクターにも煤がべったり
リビルトインジェクターです。
後は組み付けて完了です。
インジェクターパイプは再利用不可です。
コモンレールのインジェクターにはIDが書かれていて何番に装着したか登録しなくてはなりません。
ですので各気筒番号とIDが分かるよう写真に残しておきます。
G-scanが使用中だった為、ID登録に使用した診断機はMST-nanoです。
ID の 1~22 桁まで入力します。その後の 23~28 桁は飛ばして、最後の 2 桁(29、30 桁)を入力します。
左の画像のIDは5900-1AE5-C0D7-D9E2-DEEB-EB54になります。打ち込みの画像は思いっきり間違えてますね。もちろん失敗しました。
登録が完了後、エンジンを始動するとアイドリングは安定しパワー不足も改善されました。
インジェクター補正も正常の範囲内に収まっています。
これならDPDの再生頻度も減少するでしょう。
時間と金額がかかる修理となりますが効果は絶大ですね。
今回役に立った工具
インジェクターパイプを取り外すには、スパナよりもクローフットレンチが最適です。
スエカゲツール Pro-Auto 3/8″(9.5)DR.12PC.クローフットレンチセット CFW-12S
狭い場所での作業に最適!プロのためのクローフットレンチセット
おすすめポイント
✅高品質素材:耐久性に優れたクロムバナジウム鋼を採用。 長く使えるプロ仕様。
✅12サイズ対応:10、11、12、13、14、15、16、17、19、21、22、24のサイズに対応し、汎用性抜群。
✅コンパクトデザイン:狭い箇所でもスムーズに使えるクローフットデザインで、ストレスフリーな作業が可能!
✅便利な収納ケース付き:ソケットハンガー付きで、工具箱を圧迫せず収納も快適。
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